英国放送協会(BBC)は、国立国際医療研究センター国府台病院児童精神科部長として功績が広く知られる齋藤万比古(さいとう かずひこ)氏や、精神科医で評論家の斎藤環(さいとう たまき)氏、独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)精神保健研究所の鈴木友理子(すずきゆりこ)氏、引きこもりの若者たちや家族へのインタビュー取材をもとに、4日にBBC NEWS電子版で、5日にBBC Health(ラジオ放送)で、日本における引きこもりの現状を伝えた。日本固有の問題と、他の国々にも共通する問題を示唆するレポートとなっている。

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BBCのレポートは、引きこもりの状態にある15歳~39歳の若者は70万人近くに達することが、内閣府が2010年に行なった「ひきこもりに関する実態調査」により明らかになったとしている。
斎藤環氏(思春期・青年期の精神病理学)へのインタビューによると、これらの若者の多くが中所得者層の家庭出身の男性であるという。従来、引きこもりが始まる平均年齢は15歳とされてきた。しかし、近年、引きこもり人口全体の平均年齢は高齢化傾向を示しており、社会人として何年か過ごした後になって引きこもりが始まるケースが増加していること、引きこもり状態が数十年続くケースが多いことを、氏は要因として指摘している。
引きこもりの状態から脱することを難しくしている要因として、レポートでは、日本社会で伝統的に重んじられてきた「世間体」などに焦点を当てている。
社会との隔絶が長引けば長引くほど、世間体を気にすることにより、自分は落伍者であるという思いを強く抱くようになり、自信や自尊心の喪失につながっていくというものである。
国立精神・神経医療研究センターの鈴木友理子氏は、「日本人は伝統的に集団志向が強かったが、現在の若者は、個人を大事にする考え方を支持するようになっている。とはいえ、自分の帰属するグループやコミュニティの中で目立ちたくない、という心理は強い」と指摘する。
鈴木氏はさらに、自分で処理しきれない問題を外へ向かって表現し、反社会的行為に至るのではなく、引きこもりの子どもや若者たちは問題を内面化しており、このような表現形式の選択には、日本の文化的要因も関係しているという。
前述の斉藤氏は、2002年に放送されたBBCの引きこもりに関するドキュメンタリーでも紹介されている。放送後、多数の英国人の親たちから「自分の子どもも、まさに引きこもりと同様の状況にある」と訴えるメールを受信したという。氏はさらに、イタリアや韓国でも引きこもりが問題化していると見ている。
4日のBBC NEWSで、英国グラスゴー大学のアンディ・ファーロン教授(Prof. Andy Ferlong)は、欧州各国でも引きこもりに類似する状況が広がる条件が固まってきている、と警戒を示すコメントをしている。若者の失業率が50%を超えた国もあり、成人した子どもが親との同居を余儀なくされていることを指摘する。
斉藤環氏は、引きこもりは放置していても快方へ向かうことはなく、アルコール中毒と同様のサポート体制による介入が必要であると言う。診療では両親に、子どもとのコミュニケーション回復のための手立てを示し、親子関係の建て直しを目指すところから始める。
国立国際医療研究センター国府台病院の齋藤万比古(さいとう かずひこ)氏は、医師やカウンセラーなどの訪問による面談の際は、事前に引きこもり当事者へ告げておくことが絶対不可欠と述べている。突然の訪問の場合、カウンセラーが帰った後、家族に暴力をふるうなどの形で失敗に終わるケースが多いという。
レポートでは、引きこもりのサポート活動を行なうNPOが運営する「居場所」と呼ばれる集いの場の紹介や、引きこもりの若者や親たちの思いも丁寧に伝えている。
▼外部リンク
BBC Health, “The Truth about Mental Health”
http://www.bbc.co.uk/programmes/p01bdmw7

