独立行政法人行政・産業経済研究所(RIETI)は、RIETI、一橋大学、東京大学3者の各研究成果である「くらしと健康の調査(JSTAR)」のデータ元に、50代から70代の中高齢者について、基本属性や経済的社会的地位や身体的健康の状態が、抑うつ度(うつっぽさ)とどう関係しているかについて検証した。

(画像はディスカッション・ペーパーより)
これによると、世帯収入と預金額の大小に応じて4つの層に分けて抑うつ度との関係を検証したところ、中高齢者の世帯収入・預金額と抑うつ度に何らかの関係があることが分かった。
まず、世帯収入についてみると、他の要素を入れずに判断した場合、男女ともに、世帯収入が最も少ない層(214万円以下)に比べて、それ以上の層は抑うつ度が低い傾向が分かった。

(画像はディスカッション・ペーパーより)
しかしながら、年齢・学歴・就労状況などの要素を考慮して検証した結果、世帯収入については、男性では、世帯収入が最も低い層(214万円以下)に比べて、それ以上の層は抑うつ度が低い傾向があるのに対して、女性の場合、男性ほど明らかな傾向が見られなかった。
これは、中高齢者の男性が収入の大小により自分の価値を判断し、収入が下がると自分の価値が下がるように感じられることにより、抑うつ度が上がる(うつっぽくなる)可能性があること示しているものと思われる。
一方、預金額についてみると、世帯収入とは反対に、男性については抑うつ度は明らかな関係が見られなかったのに対し、女性では、預金額が最も少ない層(預金額100万円以下)に比べて、預金額が100万円~400万円以下の層では抑うつ度の差はないが、それ以上の層になると、抑うつ度が明らかに低下していることが分かった。

(画像はディスカッション・ペーパーより)
これは、多くの場合、家庭の主たる働き手が夫である男性であることもあり、中高齢者の女性から見ると、一時的な所得の変化については、心理的な影響が及びにくい一方、預金額の大小は心の中に将来への不安を生みだし、不安感を持つことと関係があるように考えられる。その結果、将来への不安が抑うつ度に与えているように思われる。
研究結果から、世帯収入や預金額と抑うつ度との間に何らかの関係が存在しているとしても、抑うつ度が低いと示されているのは、世帯収入では554万円超、預金額については400万円超に限られていることが分かった。
よって、中高齢者については、世帯収入や預金額と抑うつ度の関係が存在することが明らかになったが、年金や生活保護の充実などでは抑うつ度の低下には寄与しない可能性があることも考えられ、今後、更に精査する必要があるように思われる。
▼外部リンク
独立行政法人 経済産業研究所
http://www.rieti.go.jp/
独立行政法人 経済産業研究所 ディスカッション・ペーパー
http://www.rieti.go.jp/13j077.pdf

